27.発達障害者支援法、てんかん患者は救われるか? (2005年6月号)

発達障害者支援法が成立した。この法律でてんかん患者さんはどの程度救われるのであろうか。そもそもこの法律が出てきた所以は従来の知的障害者福祉法でカバーしきれない「発達障害者」を念頭に置いたものである。「発達障害者」の定義はこの法律の第二条に次のように定められている。『ここで言う「発達障害」とは自閉症、アスペルガー症候群やその他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動症候群その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものを言う』とある。

これを見る限りてんかん患者でも「発達障害」がなければこの恩典に当てはまらない。自閉症(アスペルガー症候群)、学習障害(LD)、注意欠陥多動症候群(ADHD)にあてはまるてんかん患者、あるいは無理にでも類似の症状を示しているとして「発達障害」の中に入れられうる患者さんは救われるかもしれない。多少無理にでも「発達障害」の中に入れる事ができるかどうかは「運用の問題」ともなる。

例えばてんかん患者の中でも知的障害があるとはいえないまでも、境界領域の知的レベルの人を考えてみよう。そのような患者さんの中には特に社会生活が未熟で、友人も少なく、手先が不器用で、動作が遅い患者さんがいる。このような人はぜひ「発達障害者支援法」でカバーしてもらいたいものである。それにはてんかん患者でも法律で規定する狭義の発達障害者(アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動症候群)には該当しないが「広義の発達障害」があるとしてこの法律を適用して差し支えないという何らかの「運用上の内規」が必要である。

自閉症(アスペルガー症候群)については前回この紙上で触れたが、これを一部のてんかん患者に準拠できないかどうかを検討してみる。自閉症(アスペルガー症候群)は次のような症状をもつ小児の発達障害である。

すなわち「知的障害は少ないが、対人関係において障害がある。したがって相互に社会的なコミュニケションがとれない。また他人の情緒に対して反応がとぼしく、他人と感情を共有することができない。また言葉の発達の遅れがあり、仲間関係を作れない。気分は不安定で唐突な感情の変化があり、また些細な刺激で激しい恐怖を引き起こす事がある」。これがアスペルガー症候群の特徴であるが、てんかんの中でもこれを準用できる患者さんは少なくはないように思える。

同じようにことは学習障害(LD)や注意欠陥多動症候群(ADHD)についてもいえる。てんかん患者で障害となるのは、(1)てんかん発作がおさまらない、あるいは合併症として(2)知的障害がある、または(3)手先が不器用、(4)偽発作などの精神症状があげられる。

これらの患者さんの一部は本法律でカバーできるかもしれない。

しかしやはり救えないのは「てんかん発作」のみを有する人であろう。そのためにはこの法律のどこかに「てんかん」と明記した文章が必要となる。

「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)