74.「症候性部分てんかん」(2009年5月号)

発作の原因として、脳に障害(キズ)がある場合を症候性てんかんと呼ぶ。傷害(キズ)があり、その部分から発作が起こる場合は、症候性部分てんかんである。しかし脳に傷害(キズ)があってもすべてがその部分から発作が起こるとは限らず、脳全体が最初から同時に興奮し、発作の起始部が分からない場合がある。それを症候性全般てんかんとよぶ。今回は症候性部分てんかんについて述べよう。症候性部分てんかんはてんかんの中でも最も多い一群で、その起始部にしたがってそれぞれ名前がついている。側頭葉から始まるてんかんは側頭葉てんかんと呼び、前頭葉から始まるてんかんは前頭葉てんかんと呼ぶ。同様に後頭部てんかん、頭頂部てんかんなどがある。

発作症状はそれぞれ発作が始まる脳の機能にしたがって特徴的な発作症状がある。ここでは特に成人の部分てんかんに最も多い側頭葉てんかんについて述べる。

側頭葉てんかんは特に側頭葉の深部にある海馬・扁桃核から発作が起きる場合が多い。この部分は特に発作を起こしやすい部分で、発作が長期にわたる場合はこの部に「海馬硬化」という変化が起き、MRIなどの画像検査で見つかる場合もある。あるいはこの部に何らかの小さな畸形、血管の異常、外傷や脳炎の後遺症などのキズが見つかる場合もある。

発作症状は、

1.まず何らかの前兆がある場合が多い。胃部不快感や不安感、恐怖感などが襲ってくる場合が多い。したがって患者は、「何か起きそうだ」と予感を感ずる場合が多い。この間トイレに逃げたり、危ない場面から遠ざかることもできる。しかし前兆は一瞬で短く、まったく逃げる余地がない場合も多いし、また発作の前兆がない場合もある。したがって発作があったことすら気づかない場合すらある。
前兆に引き続いて

2. 意識の変容や意識消失が起こる。意識の変容とは夢を見ているような体験をする場合である。自分が別の世界にいるような錯覚、昔自分が幼少時に経験したかつての記憶がよみがえってくるような感覚である。これを夢様体験と呼ぶ。意識が消失し動きが止まる。ボーっとして一点を凝視し、あるいはにらみつけるような表情、またぼんやりと空を見るような表情になる。

3.自動症が起こる。舌や口を舐め回すなど口部自動症といわれる口の動き、あるいは手を無意識に動きまわす身振り自動症がある。手のまさぐり運動、目の前のものを握ったり掴んだりすることがある。無理に離そうとすると抵抗することが多い。歩いていて発作が起こると、速度は鈍るが、そのまま歩き続ける場合もある。赤信号がわからないので、道路を横切ったりすることもある。側溝に足を踏み外すこともある。

4.さらに発作が強くなると倒れることもある。体を硬直させゆっくりと倒れる。その後全身の強直・間代けいれん発作に移行する場合がある。全身のけいれんは数秒、長くとも数分で終わり、その後もうろう状態が数分続く。

以上の発作は1-4のどの部分でもとまり、短い場合は1の前兆のみで終わることも多い。

この側頭葉てんかんは特発性てんかんよりやや直りにくいので、長期間の治療が必要である。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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