76.症候性部分てんかん(後頭葉てんかん)(2009年7月号)

脳に傷害(キズ)があり、その部分から発作が起こる場合を症候性部分てんかんという。これには発作の起こる場所によってそれぞれ固有な名前が付いている。側頭葉から発作が起こる側頭葉てんかん、前頭葉から起こる前頭葉てんかんなどがそれであり、これらについては前回、および前々回にすでに述べた。これらのてんかん発作はそれぞれ特徴的な発作症状があるので、詳しく発作症状を聞くと、ある程度発作焦点を推定することが可能である。脳波検査がその診断を助ける。症状から側頭葉てんかんと考えたが、脳波所見がそれに一致して側頭部に発作波がでれば、ほぼ診断が確定したといってよい。症状が側頭葉てんかんと考えても、脳波所見がそれに一致しない場合もありうる。その際にはMRI、脳磁図、SPECT、PETなどの他の検査所見を参考にする。側頭葉てんかんと思っていたのが、前頭葉てんかんであったなどということがしばしばありうる。

今回は後頭葉てんかんについて述べよう。数から言えば、成人では側頭葉てんかんが最も多く、ついで前頭葉てんかんである。後頭葉てんかんは比較的少ない。 後頭葉は人の視覚をつかさどる部分である。したがって後頭葉てんかんは視覚発作という発作症状を示す。目の前に光が見えるという単純な症状が多い。星のような無数の光が点滅しながら動く場合やあるいは太陽のような大きな光が1個目の前に見える場合もある。光は真正面に写る場合もあるが、視野の片方に出現し、それがゆっくり左または右に移動する場合もある。意識は清明なので、患者は発作症状をよく覚えている。そして症状はいつも一定である。たとえば左視野に見えた光の束がゆっくりと中央に移動するといった症状を訴える例では、次の発作も同じような経過を取る。発作症状が時と場合によって異なる場合は、それが本当のてんかん発作かどうか疑わしい。偽発作の可能性もあると考える。

発作症状は光の玉だったりすることが多いが、視野の欠損であることもある。視野の一部が見えなくなる場合である。視野が狭くなるので目の前のものが見えなくなり、物にぶつかることもある。見ているものがゆがんで見える発作の場合もある。いずれも視覚領野に現れる現象であり、これのみで終わることもあるが、しばしば全身けいれん発作に発展する場合がある。視覚発作から始まって、意識を失い、けいれん発作に移行する、部分発作の全般化である。

視覚発作の特徴は発作に引き続いて頭痛が生ずることである。そのため時に偏頭痛と間違えられることがある。偏頭痛は視野にちかちかする光の束が見え、その後激しい頭痛と嘔吐を伴う。視覚発作と偏頭痛が異なる点はその持続時間にある。

通常後頭葉てんかんの視覚発作は長くても数分単位であるが、偏頭痛は通常数時間あるいは半日ぐらい続く。脳波異常があればてんかんである可能性が高いが、これは絶対的ではない。てんかんでも脳波に異常が出ない症例もあり、また偏頭痛でも脳波に異常が出る場合があるので、注意を要する。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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