75.症候性部分てんかん(前頭葉てんかん)(2009年6月号)

てんかんは症候性全般てんかん、症候性部分てんかん、特発性全般てんかん、特発性部分てんかんの4種類に分けられるとのべた。成人のてんかんでは症候性部分てんかんが最も多く、これにはさらに発作の焦点がどこにあるかによって、側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、後頭葉てんかん、頭頂様てんかんなどと名前がついている。それぞれてんかん焦点が側頭葉、前頭葉、後頭葉、頭頂様にある場合を指す。

前回は側頭葉てんかんについて述べた。このタイプのてんかん発作は、成人のてんかんのうちでも最も多いてんかんである。今回は前頭葉てんかんについて述べよう。

前頭葉は人間の脳でも最も広い領域を占め、かつ最も高度に発達した部分である。動物にはない人間に特有な知能をつかさどる部分である。意欲、注意力、認識力、評価、判断など高次脳機能をつかさどる部分でもある。前頭葉が広く障害されれば、記憶、判断力などが失われ、痴呆症状が起こりうる。さらに意欲の減退、興味の喪失、自発性の減弱など一見「うつ病」とでも思われる症状も起こりうる。これらは、たとえば脳外傷や脳卒中などで前頭葉が広範囲に傷害された場合によく見られる症状であり、脳のMRIやCTなどの画像検査でその異常があきらかにされうる。

前頭葉てんかんでは通常上に述べた前頭葉の脱落症状は出ない。

前頭葉てんかんはその領域が大変広いので、発作症状も発作焦点の部位によってかなりな違いがある。発作症状を的確に捉えることが焦点部位の部位診断に大変役に立つ。

たとえば左の運動領野に近いところから発生した場合は、目や顔が反対側(右)へねじれる現象が起こる。そして右手の伸展硬直が著しい。また「フェンシング・スタイル」といわれるような姿勢をとることがある。つまり右手を前方に突き出し、顔は右手の先を見るようにねじれ、左手を挙上させるスタイルで、あたかもフェンシングしているごときスタイルをとることがある。

また前頭葉内側面や下面から出る発作症状は特徴的な「複雑な自動症」を呈することがある。短時間の意識消失、とこの間「突然走り出したり」、「のた打ち回るようなめちゃくちゃな激しい動き」、あるいは「自転車こぎのように交互にペダルを踏むような足の動き」をしたりする。

この発作は短時間で突然始まり突然終わるという特徴がある。てんかん焦点が前頭葉の内側面や下面にあるため、脳の表面で記憶する脳波では異常波が出にくい。したがってよく偽発作と間違われる。

ストレスなどによる心因性の発作や、パニック障害、解離性障害などと誤診され易い。 また発作の最中意識が保たれている場合もあるので、わざとやっているのではないかと疑われることすらある。仮にわざと人を困らせるためにやっている行動であれば、それは仮病であり、てんかん発作ではないが、前頭葉てんかんのある種の発作は「偽の発作」間違われることがあるので注意を要する。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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