71.治りやすいてんかんと治りにくいてんかん(2009年2月号)

てんかんにはいろいろなタイプがある。治りやすいてんかん、治りにくいてんかん、知的障害を合併するてんかん、合併しないてんかん、脳に障害を持つてんかん、障害が無く一見普通の人と変わりないてんかんなどさまざまである。

患者さんを最初に診察し、詳しく病歴を聞くと治りやすいてんかんか、あるいは治りにくいてんかんか、ある程度推定することができる。もちろんこの推定が間違っており、治りやすいと思ったが、実際にはなかなか治らなかった症例や、あるいは逆に治りにくいと思ったが、意外と簡単に発作がおさまった方も多い。したがって推定はあくまでも推定であり、治るといったが治らなったから見当違いだと責められても困る。

いつだったかある患者さんに、前の医師は10年たったら治るといった。もう10年たったが治らない。これはおかしいんではないかと文句をいわれたことがある。したがって確実なところはわからないといったほうがいいのかもしれない。

治りやすいか、治りにくいかはこの事例がどのてんかんタイプに属するかを判断することから始まる。それではどのタイプのてんかんが 治りやすいのだろうか。これを理解するにはてんかんの分類を知らなければならない。

てんかんタイプの分類は複雑でわかりずらいと思うだろうが、実際はきわめて簡単なのである。

まずてんかんを全般てんかんと部分てんかんに分けよう。部分てんかんは脳のある部分から発作が起こるてんかんで、発作症状を詳しく聞くと発作焦点がわかることが多い。全般てんかんは脳全体が同時に発射するてんかんで、発作の起始部を脳の一部に求めることができないてんかんである。これらは主に脳波検査でわかる。てんかんの分類に脳波が重要であるという理由がここにある。もちろん脳波検査でも分からない場合も多く、脳波に異常が出ないてんかん患者もいる。

一方てんかんを脳に傷(障害)があるかどうかで分ける分類がある。傷がある場合を症候性てんかんと、傷が無い場合を特発性てんかんと呼ぶ。脳に傷がある場合、脳のCT検査やMRI検査でそれが見つかる場合もあるが、見つからない場合も多い。異常が見つからないといっても脳に傷が無いとはいえない。ただ傷が小さいので見つからないのかもしれない。その際もっと詳しく、たとえば脳磁図、SPECT,PETなどのより詳しい検査をすると病巣が見つかることもある。これらの検査については別のところですでに記載した。

この全般てんかんと部分てんかんという軸と、症候性てんかんと特発性てんかんという軸を組み合わせると四つのマスができる。すなわち症候性全般てんかん、症候性部分てんかん、特発性全般てんかん、特発性部分てんかんである。

この四つのうちもっとも治りやすいのは特発性部分てんかんであり、次は特発性全般てんかんである。最も治りにくいてんかんは症候性全般てんかんであり、症候性部分てんかんはこの中間に入る。

さてあなたのてんかんはこの4分類のどこの属するのかしら。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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