102.てんかん最前線:新規抗てんかん薬を用いたてんかんの薬物治療ガイドライン –日本てんかん学会の取り組み– (2011年9月号)

日本において、ここ1-2年の間に4種類の新しい抗てんかん薬が認可された。すなわち、ガバペン(ガバペンチン)、トピナ(トピラメート)、ラミクタール(ラモトリギン)、イーケプラ(レベチラセタム)である。これらはすでに10数年前から欧米では承認・販売されていたものである。日本で承認が遅れ得た理由は「日本人」にも外国人と同様に有効であるかを確認するため、治験をやり直さなければならなかったからである。これには膨大な費用と時間が必要であった。いずれにせよ待ちに待った新しい抗てんかん薬が出たことは大変喜ばしいことであり、これを受けて日本てんかん学会は昨年6月にガイドラインを発表した。「新規抗てんかん薬を用いたてんかんの薬物治療ガイドライン」である。

その主な要約をここに述べる。

1) 新抗てんかん薬は成人難治てんかんの部分発作には明らかに有効である。効果・副作用・脱落例はいずれも用量とともに増加した。しかしガバペンはミオクロ―ヌスを悪化させることがある。

2) 上記新薬の単剤治療は新たに診断されたてんかん患者でも有効だった。(残念ながら日本において単剤治療はまだ認められていない)

3) ラミクタールは新たに診断された欠神発作にも有効であったが、ガバペンは無効であった。

4) ラミクタール、トピナ、イーケプラは特発性全般てんかんの全般性強直間代発作およびミオクロニー(JME)にも有効であった。

5) 上記新薬は小児の難治てんかんにも有効である。(残念ながら日本においては現在小児に使用が認められているのはラミクタールのみである)

6) 従来の抗てんかん薬も捨てがたく、特にテグレトール(部分発作)とバルプロ酸(全般発作)は第1選択薬として利用価値が高い。

最後にまだ日本では承認されてはいないが欧米ですでに承認されている薬剤に「ルフィナマイド」と「オキシカルバマゼピン」がある。いずれ日本においても治験が終了して承認・販売される日が来るであろう。

私はこれら新薬の開発に初期から関与してきたが、今多数の患者さんに使用してみると、治験では分らなかった新薬の新しい側面が見えてくる。

それは気分(感情・情緒)に及ぼす作用である。気分を盛り上げて元気にする作用がある一方、逆に落ち込みうつ気味にする作用もあり両刃の剣といえる。この薬を飲むと「落ち込むからいやだ」という患者さんがいる一方、発作もなくなり頭もすっきりして配慮もでき見違えるようによくなった患者もいる。このような作用は従来の抗てんかん薬では見られなかった一面で、これで恩恵を被る患者さんは多いが、今後はこのような精神面にも注意を向けて観察する必要がある。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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