111.発作頻発と発作重積状態(2012年6月号)

てんかん発作は時には短時間に何回も続けて起こることがある。意識が回復する暇もなくすぐに次の発作が起こることを発作重積という。

発作が短時間に何回も起こるが、発作の後に一旦意識が回復するが、間もなくすぐに次の発作を起こす場合を発作頻発という。

強い強直・間代性発作(大発作)が重積すれば命が危ない。すぐに発作を止めないと死亡することもある。こんな時には救急車を呼ばなければならない。抗てんかん薬を急に中止した場合等にこのような大発作重積が起こることがあるが、実際は少ない。私は40年以上てんかん診療にかかわってきたが、大発作重積状態で死亡した例は数少ない。

強直・間代性発作(大発作)が一日の内に数回(多くは3-5回以内)繰り返す発作頻発例は比較的多い。発作後に一旦意識は回復するが、数時間後にまた再び同様の発作を繰り返す。多くは抗てんかん薬が切れて、そのまま放っておいた場合などにみられる。

発作が比較的短い強直発作(多くは数秒―数10秒)が頻発する例はよくみられる。レノックス・ガースト症候群といわれる難治てんかんは短時間の強直発作を特徴とするが、この発作が数分おきに連続して起こり、それが1時間以上続く場合はそう珍しくない。そのような場合は、頓服薬としてニトラゼパムを飲ませると効果がある。飲めない場合は肛門よりダイアップ座薬(ジアゼパム)を使う。時には30分おきに2回以上繰り返し使用して効果を得ている。

小発作(欠神発作)も重積状態をとることがある。小発作(欠神発作)は一瞬、意識を失い、動作が停止する軽い発作であるが、これが重積すると、数時間あるいは長ければ2-3日意識が曇った状態が続く。このような小発作重積状態はかなりまれであり、私は今まで数例の経験しかない。

側頭葉てんかんに意識を失い動きが止まるのみの複雑部分発作がある。意識減損発作ともいわれている。この発作は通常数分で終わるが、時に重積状態になることがある。数時間あるいは一両日意識が曇ったままの状態が続く。

倒れたりけいれんを起こしたりはしないが、まとまらない動作、意味不明な発語がある。この様な症例もさほど多いわけではない。これに似て複雑部分発作が頻発する例は多い。意識が短時間曇るのみの発作が、2-3分おきに頻発し、それが30分ぐらい続くのである。意識は断続的に戻るが、まとまったことはできなくなる。

小発作重積・頻発や複雑部分発作重積・頻発は意識が曇りぼんやり状態が続くので解離性障害やうつ病など、他の精神疾患と間違われたりする。脳波を取ればその診断は簡単である。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

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