19.反射てんかん。その1.光過敏てんかんについて(2004年10月号)

前回はてんかん発作の誘因についてお話しました。寝不足、緊張、不安、興奮、月経、アルコール、発熱などが発作の誘因になる場合があることを述べました。

今回はある特殊な外的刺激が直接発作の引き金になる場合について述べます。通常この種の発作を「反射てんかん」と呼んでいます。刺激と反応(発作)が直接結びついているので、発作発症の機序を考える上で、貴重な症例が多い。「反射てんかん」の代表的なのが光過敏てんかんである。光刺激によって誘発されるてんかん発作であり、現実的にはテレビ(「テレビてんかん」とよばれた)、アニメ、木々の間から漏れる太陽光線、水面に反射する光(かつて「水てんかん」と呼ばれた)、燃え盛る火(かつて「火てんかん」とよばれた)などの光刺激が発作を誘発する場合である。欠神てんかんや若年ミオクロニーてんかん、覚醒時大発作てんかんなど特発性全般てんかんと呼ばれる発作はしばしば光で誘発される事がある。重症ミオクロニーてんかん(SME)も光には大変過敏である。成人に発症する振戦(震え、主に手先)を伴う「良性成人型家族性ミオクロニーてんかん」という病気があるが、これも光に対して過敏である。

後頭葉の視覚領野に病巣がある部分てんかん(後頭葉てんかん)の場合も光過敏性を示す。その際の発作は光の球が目の前に現れるような視覚発作が先行する。

光過敏てんかんは脳波検査で断続的な光刺激により発作波が出現するので診断がつく。

数年前にアニメ映画、「ポケモン」によって引き起こされたてんかん様の発作があって、社会的問題となったが、これは「光感受性発作」といい、厳密にはてんかんとは区別される。「ポケモン」の際にはただ1回だけで、再発しない場合も含まれるのでこれらすべてを「てんかん」というわけにはいかないのが理由である。

「光過敏てんかん」の一つに「模様過敏てんかん」がある。縦縞、横縞、網目模様、渦巻き模様などをじっと見詰めることによって発作が起こる場合である。この模様は現実的には本の表紙、天井・壁の縞模様、トタン窓(波を打つような縦じま模様がある)、デパートのエスカレーターなどを見ることによって発作が起こる場合である。この際脳波を記録しながら模様を見せることによって発作波を誘発できるので診断がつく。発作は多くは一瞬ボーっとする欠神発作の場合が多いが強直・間代発作の事もある。

「光過敏てんかん」の一つに「自己誘発発作」というのがある。自分で発作を誘発する場合で、きわめてまれである。例えば本の表紙などの「模様」をじっと見つめることにより、あるいは目の前に自分の手を持ってきてヒラヒラ動かして断続的な光刺激を作り出し「発作を誘発」する場合である。

発作は多くは「欠神発作」であり、あたかも快感を得て、嗜癖・依存症になっているような印象を与える。てんかん発作は通常不快な感じを引き起こすものであるが、快感を得ているためかもしれない。中・軽度の知的障害を合併する小児に見られ、その理由は不明である。

「反射てんかん」は「特殊なてんかん群」に分類されており、発作が誘発される機序を理解する上で貴重な症例が多く注目されている。

「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一

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