182 発作も治り、薬も必要がなくなったてんかん症例(2020.11月号)

てんかんは発作が繰り返し起こり、その発作症状や頻度も人によって大きな差がある。 発作がなかなか治りにくく、長期間にわたって薬を飲まなければならない人も多い一方、発作が軽くてかつ、薬も必要なくなる場合もある。最も治りやすいてんかんには(1)特発性全般てんかん、(2)小児の良性部分てんかん等がある。治りやすいかどうかは脳波を見ればある程度見当つけることができるが、確実ではない。数年以上発作が完全になくなった方は、医師と相談のうえ、最終的には薬をやめることができる場合もある。ここではそのような症例を示す。

症例1:現在50歳の男。12歳、14歳で倒れ全身けいれん2回あったがその後、ずいぶん長い間、薬を服用したが発作はなかった。現在の脳波には特に異常がなく、かつ紹介状によると、過去の脳波は全般性の異常であり、部分徴候がなかったので薬はやめられると判断した。45歳にて服薬終了し、その後少なくとも5年以上発作はない。


症例2.35歳女、2歳時にけいれん発作ありその後小学3年と中学1年に発作あった。しかしその後も発作がないので、高校2年の時に自分で服薬やめた。ところがまもなく発作再発したので服薬を再開した。しかしさらにその後も発作がないので20歳ごろで再び服薬を中止した。しかし25歳で年に2回の発作が再発したので、服薬を再開した。その後当院を受診し、しばらく発作がなかったので本人と相談し、できるなら薬を止めたいという意向が強かったので、本人同意のもと30才にて薬を減量、中止した。その後ほぼ5年間、発作はない。発作再発しの誘因は生活が不規則になり、寝不足が続いたためのと判断した。十分な睡眠をとるよう指導し、その後発作はない。プログラマーとして元気で仕事している。


症例3.75歳男 高齢初発てんかん。65歳ごろから朝、目が覚めるとすべての記憶がまったくなくなる数分のエピソードがみられるようになった。今自分がいる場所や、昨日まで何をやってきたのか分からなるなど、全生活史健忘発作(一過性てんかん性健忘)が月1-2回出るようになった。少量のカルバマゼピンで発作が完全に消失し、5年ほど発作がないので、薬を減量、ついに中止したが発作の再発はない。
高齢初発てんかんは発作も軽く、治りやすい場合があり、同様に薬をやめることができた症例をその後も数例験した。高齢初発てんかんは治り易いてんかんの1つであると知った。これは今まで指摘されたことがない新しい所見である。
(本症例については ともしび 第149号(2015.8) 一過性てんかん性健忘を参照)  
(参考文献:薬物減量中止については、ともしび 第98号(2011.5):てんかん最前線、成人てんかんは本当に治りうるのか:成人てんかんにおける薬物治療終結のガイドライン—―日本てんかん学会編――を参照してください。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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