171 新薬 ラコサミド(ビムパット)の感触(2018年10月号)

最近新しい抗てんかん薬のラコサミド(ビムパット)とフィコンパ(ペランパネル)が発売になり、もうすでに広く使われるようになった。私は今ではかなりの患者さんに使っているが、新薬を最初に使った頃はきわめて少量から始め、副作用がないかどうかに神経を使った。

一般的に最も多い副作用は、「ふらつき」、「眠気」、「頭痛」、「めまい」、さらには「意欲の低下」などもありうる。

何時頃服薬して、副作用と思われる症状が出たのは、服薬後何時間後か、そしてそれが何時間続いたのかなどを聞きだして、薬と関係があるかどうかを判断する。例えば服薬後1時間以内に出現し、数時間で消えると言えば、それは確かに薬のせいだといえる。

この問いかけにあいまいな返事しか戻ってこない時は、それが薬のせいだとは言えないと考える。また服薬後数日で出る副作用もある。2-3日続けたら、「元気がなくなって落ち込んだ」、あるいはあの薬飲んだら「イラついて眠れなくなった」などという患者さんもいるので、副作用の判断には慎重にならざるをえない。

このようにして新薬の感触を確かめるということが重要である。

ラコサミドは現在自験例20数例に使っているが、有効例(50%以上改善)が約30%、著効(90%以上改善)が約20%前後であった。
症例を示そう

症例(1) 40歳前後の女性
10歳時にけいれん発作が2-3か月に1回の頻度で出始め、服薬を開始したらまもなく発作が止まったので服薬中止した。ところが10年後に発作が再発した。今度はけいれん発作ではなく、意識がぼんやりして、動きが止まる短時間の複雑部分発作(側頭葉てんかん)であり、その頻度は月数回であった。幸いにも服薬再開したらまもなく発作は消失した。その後3年間、服薬したが自己判断で薬をやめてしまった。その後数か月たって、発作が再発した。こんどは月に数回から時には毎日みられるようになり、難治な経過をとるようになった。また精神的に不安定になり、「確認癖」(窓や玄関の鍵を気にして何回も確認する)、「いらつき」、「抑うつ」もみられるようになった。従来の抗てんかん薬をほぼすべて使用したが、効果はなかった。

この症例にラコサミドを50mgから始めた。そうしたら平均月数回の発作から、月1回に減少し、300㎎で発作が完全消失した。ここ6か月ほど発作はない。精神症状も改善した。

症例(2) 20歳台の女性
15歳初発、ボーとして意識減損、動作停止の複雑部分発作である。その頻度は週数回から毎日数回と難治であった。20歳ごろ当院受診し、脳波では両側側頭部に発作波がみられ、側頭葉てんかんと診断された。従来の抗てんかん薬で発作はおさまず、脳外科にて手術を検討したが、発作が両側側頭部から出るので手術は難しく、迷走神経刺激術が勧められた。

この症例にラコサミド50mg からスタートし、5か月間で400mgまで増量したところ、発作は月1ぐらいまで軽減した。ほぼ毎日あった発作が激減したので、治療している私も驚いた。現在はこの新薬を入れて2種類の薬で、仕事に復活できた。新薬もこのように効果抜群な例もあり、併用薬も減らせて順調である。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする