186. コロナ対策と人権 (2021年7月号)

コロナ・ワクチンがいよいよ大規模接種が可能になり、東京では1日あたり1万人、大阪でも5千人が可能になったという。しかしこの数字は近い将来これだけのワクチン接種が可能であるという、将来の見通しであり、これが軌道に乗れば、これでコロナも減少すると思えるが、まだ接種が始まったばかりで、コロナ罹患者は今も増加している。そして今回、3度目の緊急事態宣言がなされ、それがさらに延長になった。そしてマスク着用と飲食店の時短営業、酒類提供の自粛が都道府県知事からお願いされた。テレビをつけると、全国各地の感染者数や、不幸にも亡くなられた方の数が頻回に出てきて、同時に都道府県知事からの自粛要請が目に飛び込んでくる。いまや人々はかなり疲れ果てて、抵抗して従わない人や指示に従わないお店が出てきている。「緊急事態ではない」と言って、時短営業に従わない店や、お酒の提供をやめないところも出てきた。人々は飲食店に入らなければお酒を飲んでもいいと言って、外で「街路のみ」や「マスク拒否」する人も出始めた。

総理大臣や都道府県知事からの強い要請が何度もなされる背景には法的根拠が整備されていなければならない。これに関連する法もすでに整備がなされ、まん延防止等重点措置法(新設、令和3.4.9)が成立した。これにより、飲食店等の時短命令、違反者には20万円の過料(緊急事態宣言中は30万円)、マスク着用の義務付けと従わない場合は「入場禁止」にすることが可能になった。また入院が必要なコロナ罹患者は、入院先からの逃亡には50万円の過料、発病の状況について虚偽の回答した日人は30万円の過料に処するという罰則も可能になった。しかしこの罰則ができたが、実行は慎重でなければならないとする「人権擁護派」がいる。

また世界を広く見回してみると、外国では、緊急時には都市全体を「ロックダウン(封鎖)」させ人の移動を強制的に禁止することができ、感染を抑える方法もある。これは日本にはない。

ロックダウンは日本では想像もつかない大事件が、諸外国でかつて起きてきた歴史があるので、この様な手荒な手段が認められている。ついでながら私の経験の話をしよう。私がアメリカに留学していた時、ケネディ大統領が暗殺され、それに続いてアメリカ全土に人種差別の暴動が起きたことがある。当時私はデトロイト市の救急病院で研修中だったが、市は封鎖され、外出禁止令が出された。町中に戦車が行きかいし、町は包囲され、暴徒と市街戦が始まった。救急病院の医師はすべて緊急時に備えて、院内待機、または外出時には身分証明書をもたされ、私も外出時には何度も警察官の尋問に遭遇したことがある。

話が横道に入ったが、ここでコロナの「まん延防止等重点措置法」に戻そう。日本医学会連合会は次のように注意した。「かつて結核・ハンセン病では患者・感染者の強制収容が法的になされ、まん延防止の名目の下、著しい人権侵害が行われて来たという歴史があり、・・(中略)・・患者個人に責任を負わせることは倫理的に受け入れがたい(日本医学連合会、感染症などの改正に関する緊急声明2021-03-16)。」これに対して政府は、患者・弱者には直ちには適応せず、謙抑的(へり下って控えめにすること)にとどめると返事した。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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