3.てんかんと障害 (2003年6月号)

前回は運転免許のお話をしました。てんかんという病気を持っていてもある条件を満たせば運転免許を取ることができるという話をしました。 障害をもっていても「運転できる能力」があれば運転が可能と見なされるようになったのです。 この「運転できる能力」とは誰がどのような基準に基づいて決めるのでしょうか。自分は「運転能力がある」と思っても、他人から見れば「あぶない」と思はれることも少なくありません。 道路交通法では、発作に関しては「医師が判断」し、技術的には「試験」に合格しなければなりません。

さて発作を持っているご自身、あるいはご家族の皆様、ご本人には発作に関連して「障害」があるとお考えですか。あるとすればどの程度とお考えですか。障害を正しく、客観的に判断することは大切なことですが、これがまたたいへん難しいのです。自分の欠点を見過ごして、自分を「過大」に評価すると、他人の目には「ひとりよがりで、勝手、わがまま」とうつるかもしれません。そこで他人の意見もよく聞くことが大切となります。他人の意見をよく聞いて、それをおおいに参考にし、反省するところを反省し、そして自分にミガキをかけ、生活範囲を広げたいものです。

次にてんかん発作を持っている人々が常日頃遭遇する障害について具体的に考えてみましょう。

1. 発作によるハンデキャップ:発作による障害を改善することは、個人の努力では難しい。かつての私の調査では、就職する意欲も気持ちも充分あるが、倒れる発作が月に1回以上あれば、また倒れないが動きが止まり意識を失う発作が、週1回以上あれば就業率は一段と下がる。これらの人には外部からの援助が必要になる。

2. 知的障害によるハンデキャップ:軽度の場合にはハローワークの障害者窓口で相談するか、あるいは職業訓練校などでの訓練を利用しよう。

3. 手先の不器用によるハンデキャップ:動作が遅くて不器用なてんかん患者さんはたいへん多い。これが大きな障害になっている場合がある。早い時期からの訓練で改善が期待される。

4. 引っ込み思案というハンデキャップ:長い治療暦をもつ青年に多い。学歴には関係がなく、社会性が貧弱であるといえる。積極的に外に出て、皆と接しよう。努力しだいでどうにでもなる。

5. 人間関係が苦手なハンデキャップ:人嫌いになってしまった人。まず「あいさつ」から始めよう。大きな声で「あいさつ」が出来るようになったらしめたもの。努力しだいでどうにでもなる。

以上てんかんと障害について考えてみました。

自分のハンデキャップをよく認識して、無理のない現実的な対応を期待します。

「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)