113.発作の裏にある脳の病気:その2  進行性ミオクローヌスてんかん(特にDRPLAについて)(2012年8月号)

脳に進行性の病変があり、てんかんも合併する脳の病気がある。脳の病気が進行するので、歩行障害や言語障害、記憶障害、認知障害などが起こり、重い場合は寝たきりになることさえもある。

このような病気に進行性ミオクローヌスてんかんと呼ばれる一群の疾患がある。かなり稀な病気であり、病状も進行するので、その点一般のてんかんとはかなり異なる。

幼少時に発病する場合は、その進行が早く、てんかん発作も難治である。成人になってから発病したのはその進行は遅い。そのような場合はてんかん発作が起こらないこともある。

この種の疾患の一つにDRPLAと呼ばれる病気がある。歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症という長ったらしい名前がついている。小脳と脳幹が萎縮していく遺伝性の神経難病であり、どういうわけか日本人に比較的多い。外国人にはきわめてまれである。

発作は手足が一瞬ビクッとなるミオクロニー発作と強直間代発作(大発作)である。数年後には歩行障害(ふらつき)が出てきて、最終的には歩けなくなることもある。

この病気では遺伝子の異常が証明されている。その座は染色体12番の短椀にあり、アミノ酸配列の異常な延長にあることが分った。延長が短ければ症状が軽く、延長が長ければ症状は重い。そしてその素因は親から子に伝わる。そして子に出現する確率は50%である。

私は50年近い臨床経験に中でこの病気を数例経験した。今私たちのクリニックには約3000人近いてんかん患者さんが通院しているが、その中には本疾患は1例しかいない。かなり稀な病気ではあるが、世界的に見ると日本人に比較的多い。外国人にはほとんどない。

昔経験した症例について述べる。

初診時42才の女性である。12歳からけいれん発作が出現した。最初は年に1回程度であったが次第に頻度が増えて、数年以内に月に2-3回と増えた。そして同時に記憶や認知の障害が出てきて、高校を中退せざるを得なかった。その後27才の頃より、言語障害、ふらつき(小脳症状)が出てきて、32才頃から全く歩けなくなった。

脳波にはてんかん発作波が多発しており、全般的な高度の異常を示した。家族の同意のもとで、遺伝子を調べたところDRPLAと診断が確定した。家族全員の遺伝子検査の結果、この病気は祖父から父親を経由してこの子に伝わったものと判定された。祖父と父は軽度の小脳失調(ふらつき)と言語障害があったが知的にも正常であり、てんかん発作もなかったが、しかし異常な遺伝子を持っていた。

この病気は進行性の神経症状とてんかん発作がある神経難病である。今のところ治療法はないが、将来遺伝子治療も可能な時代が来ると期待される。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

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