95.てんかん最前線:小児てんかんの包括的治療ガイドライン –日本てんかん学会編–  (2011年2月号)

今までは成人期のてんかんについてお話ししてきたが、ここで少し論点を変えて、小児てんかんの話をしよう。てんかんはどの年齢でも発症しうるので、てんかんを年齢で区分するのはいささか無理がある。しかし小児てんかんは発症年齢によってかなりな特徴があり、治療方法も成人とは異なる。新生児、乳幼児、幼児期、小児期などにそれぞれ特徴的てんかんのタイプがあり、それゆえ発作症状も多彩である。

ここで日本てんかん学会は主に小児てんかん専門医の検討を踏まえて、「小児てんかんの包括的治療ガイドライン」を作成した。

ここでは前置きとし次のような特徴が述べられている。「小児期に発症するてんかんは多彩であり、その臨床像や予後はそれぞれ一様ではない。予後のきわめて良いもの、難治が予想されるものさまざまである。したがってその治療はそれぞれに特有な配慮をすることが必要である」としている。

小児てんかんの包括的治療ガイドラインには主に次の事項が載っている。

1)「初回の発作は直ちに治療せずに2回目の発作が起きてから治療を始めても遅くない」。
なぜなら発作が1回だけでその後再発しない例が多いこと、また2回目の発作が起こる確率は治療しなかった群では50%、治療した群では25%と差があるが、長期予後は変わらないことなどが根拠である。

2)病名告知に関して、「患児・親にてんかんに関する十分な情報を提供すべきである」という。「病気に対する社会啓発が進み、患児のQOLの向上に役立つ」からである。

3)治療は単剤投与から始める。「一般的には部分発作にはカルバマゼピン(テグレトール)またはバルプロ酸(デパケン、バレリンなど)、全般発作にはバルプロ酸が推奨される」。そして「抗てんかん薬で発作の抑制が困難な場合、てんかん外科医に意見を求める」とある。てんかんの外科的治療により早い段階で、悪い脳を切り取ってよい脳の発達を促すことがその後の生活の質(QOL)に良い影響をもたらす場合が少なくないからである。

4)抗てんかん薬の副作用および血中濃度モニターに関しては定期的に行う必要がある。特に服薬のコンプライアンス(信頼性)の確認、中毒症状の可能性がある場合、薬用量の決定などに役立つ。

5)治療中止の判断と断薬の手順については、(1)発作抑制が3年以上、(2)脳波の正常化、(3)神経学的所見が正常、(4)患児および両親が希望するときに行う。

なお減薬は3-4カ月毎に25%ずつ減量していくのが望ましいとしている。

小児てんかんはウエスト症候群、レンノックス症候群など難治な場合もあるが、また小児良性部分てんかんなど治りやすい発作も多く、その症候群は確かに多彩である。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

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