127.発作の裏にある脳の病気:その16 脳炎・脳膜炎(特に細菌性髄膜炎、重篤化しやすく緊急治療が早期に必要(2013年10月号)

前回は無菌性脳膜炎についてお話ししました。この疾患は病原菌がビールスであり、症状が比較的軽く、あまり後遺症も残さない脳の感染症である。

それに反して細菌性脳髄膜炎は重篤である。特に免疫力が十分でない6歳以下の小児に多い。しかし最近は高齢者の発病もみられるようになった。急激な発熱、頭痛、嘔吐などが最初の兆候である。さらに進行すると意識障害、痙攣などがみられる。最初はカゼの症状との区別がむずかしいため、病気の発見がおくれることもある。治療が遅れると重大な後遺症を残すことも多く、さらに死亡率も高い。もっとも重篤な経過を取るのは髄膜炎菌性髄膜炎であり、電撃的経過を示し、数日で死亡に至ることもある。重篤化しやすく早急に治療が必要。

起炎菌は生後3カ月未満では大腸菌、B群連鎖球菌、3カ月以降においてはインフルエンザ菌が多く、成人では肺炎球菌、髄膜炎菌の頻度が高い。高齢者(50 歳以上)では肺炎球菌、グラム陰性桿菌、リステリア菌とされている。

結核菌による髄膜炎もある。これは比較的症状がゆっくりしており、倦怠感、微熱、間欠性頭痛などが最初の兆候であり、次第に激しい頭痛、嘔気、歩行困難、行動異常、意識障害、痙攣へ進展することが多い。

後遺症として水頭症、てんかん、脳神経麻痺(ろう、全盲、眼球運動障害など)、知的障害、脳実質障害(脳梗塞、脳出血)がありうる。

私はある日本赤十字病院(総合病院)で脳波判読に従事してきたがここで最近経験した症例を示す。

1)40歳台 女性、肺炎球菌性髄膜炎。2日前から急激に発熱、頭痛、嘔吐がみられ、間もなく意識を失いショック状態となった。救急車で運ばれてきた。病状は急激に悪化し、4日後には脳死状態となった。

2)80歳台 女性 肺炎球菌性髄膜炎。 頭痛・嘔吐にひきつづき昏睡状態に落ち入った。改善したが、植物状態となった。

3)50歳台 男 結核性髄膜炎。
2か月前より咽頭痛、頭痛などの感冒様症状あり、近医を受診し抗生剤の内服を続けた。その後しゃっくり、頻尿あり、診察の結果、髄膜刺激症状(頸部の硬直)を認めた。脳脊髄液の検査で特徴的な所見が得られ(細胞数上昇、蛋白高度上昇、糖の軽度低下)、さらに意識障害、左顔面麻痺、左片麻痺が生じた。抗結核剤とステロイド投与で症状は改善傾向にある。

最近経験した細菌性髄膜炎の症例を簡単に述べた。これ等の症例はすべて重症であり、1例は死亡、残りは重篤な後遺症を残した。

髄膜炎は重篤化しやすいので早期に適切な治療が必要である。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする