115.発作の裏にある脳の病気:その4  ヨーロッパのある地域に多く日本では少ない進行性ミオクローヌスてんかん(特にウンベリヒト・ルンドボルグ病)について) (2012年10月号)

前回は進行性ミオクロ―ヌスてんかんについて話した。この病気は脳の変性疾患の1つで、ふらつき、歩行障害やてんかん発作、認知機能の低下、記名力障害などが来る進行性の病気である。

そもそもこの種の病気はさほど多いものではない。てんかん患者1000人に対して1人あるかないかの珍しい病気でもある。この病気は病態が異なるいくつかのタイプに分けられる。先に述べたDRPLAもその1つあり、日本に多いが外国には少ない。

一方同じような疾患でウンベリヒト・ルンドボルグ病(U・L病)というのがある。最初に記載した人の名前を取ってこう呼ばれるようになった。不思議なことにこの病気はヨーロッパのある地域に多発する。バルト海を取り囲む沿岸に多い。すなわちフィンランドの南東部、エストニア、スウエーデン中部に多い。ここでは約1万人に数人の割で発生するが、その他の国には少ない。もちろん日本にも少ないが皆無ではない。日本でも数例の報告がある。

この病気もDRPLAに似て、思春期から青年期にかけて発病し、てんかん発作、ふらつき、歩行障害、小脳失調などが現れ、次第に知的機能が侵される病気である。

私は過去に2例の経験がある。2例とも両親はいとこ同士の結婚で発病者は娘である。その1例について述べる。

発病は15歳頃である。それまで何の異常もなく中学まで進んだが、中学2年に入ると最初のけいれん発作が出現した。発作は月に数回あったが、バルプロ酸(SV)で比較的よく抑制されていた。しかし数年以内に奇妙なミオクロニー発作が出るようになった。それは運動を開始すると同時に手足が大きく震えるミオクロニー発作である。例えば手を伸ばして何か物を取ろうとすると、手足が一瞬ビクッとなって物が取れなくなる。彼女はこの発作の特徴をよく知っていて、一呼吸置いてからゆっくりと動作に移る。これを運動誘発性ミオクローヌス発作と呼ぶ。動きを開始するときいつも決まって誘発されるので日常生活に大きな支障をきたした。そのうちに言葉を発すると同時に口のミオクロニーも出るようになった。そのため言葉が出にくくなり、どもるようになった。数年後、ふらつきやめまいが見られるようになり、ついには車椅子を使わなければならなくなった。軽い認知障害もみられ、些細なことでいらつき精神科に数回入院した。私はこの症例の主治医として約30年以上付き合ってきた。

不思議なことには、25歳を過ぎた頃から病気の進行を止まりそれ以上悪化することなくなった。50才近くまで生き、天寿を全うした。

この病気の原因は遺伝子にある。タンパク質の一種のシスタチン B(CSTB)の異常で、常染色劣勢遺伝である。この疾患は日本では少ないが学問的には興味がある。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

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